カボス搾 汁 残 さ
の成 分 特 性 と
食 品 素 材 化 による成 分 変 化
廣 瀬 正 純 ・
香 嶋 章 子
食 品 産 業 部Components of Kabosu Juice Residue and it's Changes by Processing to Food Materials
Masazumi HIROSE
・
Akiko KASHIMA
Food Industrial Div.
要
旨
カボス搾 汁 残 さの一 般 成 分 組 成 は ,水 分 が非 常 に多 く,次 いで炭 水 化 物 で,両 者 で全 成 分 の97% 以 上 を占 めてい た.炭 水 化 物 の主 体 は 糖 と食 物 繊 維 であった.その他 の成 分 では酸 と果 皮 精 油 は かなり残 存 していた.食 物 繊 維 の物 理 化 学 的 性 質 は 市 販 繊 維 素 材 と比 較 して良 好 であり,ダイエタリー ファイバ ー としての利 用 の可 能 性 が示 唆 され た.これ ら の成 分 組 成 は 未 熟 果 と成 熟 果 で差 が見 られ た.
カボス搾 汁 残 さを食 品 素 材 として利 用 す るため,軟 化 ,脱 苦 味 処 理 したものをペ ー スト化 した.ペ ー スト化 処 理 により, 一 般 成 分 では 灰 分 ,たんぱ く質 が減 少 ,その他 成 分 では 酸 ,アスコル ビン酸 ,フラボノイドが減 少 した.果 皮 精 油 も減 少 したが,食 品 素 材 としては 利 用 可 能 であった.食 物 繊 維 は ,量 が増 加 しただけでなく,物 理 化 学 的 性 質 も向 上 しダイエタ リー ファイバ ー 素 材 としての利 用 が期 待 できた.
1.
は じ め に
カボス果汁の製造時に発生する500tのカボス残さは,野菜 や他の柑橘類などの搾汁残さに比べ分解が困難なため
1) ,そ のままでは悪臭等環境への悪影響が大きく問題となっている.
これまでの研究でカボスは様々な機能性を有することが明ら かになっていきていることから,搾汁残さの成分特性,機能性 を明らかにするとともに食品へ添加することにより有効利用を図 る.
2.
実 験 方 法
2. 1 カボス搾汁残さの成分評価
2. 1. 1 実験材料
カボスの搾汁残さは,千歳村の搾汁工場において,未熟果 実残さは9月29日に,成熟果実残さは11月2日にサンプリング し,- 20℃で冷凍保存したものを用いた.
2. 1. 2 分析方法
凍 結 保 存 しお いた搾 汁 残 さを,室 温 で解 凍 後 ,スピー ドカッ ターで裁断したもの及びこれを凍結乾燥後0. 5mmのフィルター を装着した遠心粉砕機で粉末化したものを分析用サンプルと した.
一 般 成 分 につ いては,水 分 は70℃ 減 圧乾 燥 ,たんぱ く質 は ケルダール法,脂質はソックスレー抽出法,灰分は500℃で灰 化して測定した.
酸含量は水抽出液を0. 1N水酸化ナトリウムで滴定,精油含 量は,サンプルを水とともにホモジナイズした混濁液をSC O T
T and V E L DH UIS の蒸留法で測定した.アスコルビン酸は, 10%メタリン酸で抽出したものをH PL C で分析,糖組成は80%エ タノールで抽出したものをH PL C で分析した.食物繊維は,N DF 中性デタージェント法で総繊維量として求めた.ペクチンは, 水溶性,ヘキサメタリン酸可溶性,塩酸可溶性の区分について ジメチルフェノール法で測定した.
食物繊維としての保水量は,凍結乾燥粉末に加水,脱気後 1時間吸水させたものを3000rpm,10分間遠心分離した沈殿物 の重量増加で求めた.水中沈定体積は,凍結乾燥粉末に加 水,脱気後メスシリンダーに洗い込み12時間後の体積で求め た.
2. 2 カボス搾汁残さの食品素材化による成分変化
2. 2. 1 実験材料
カボス搾汁残さは,千歳村の搾汁工場において 月 日に サンプリングし,- 20℃で冷凍保存した未熟果実残さを用いた.
食品素材として搾汁残さを利用したペーストを調製した.搾 汁残さを室温で解凍後,種子を除去し約5mm幅にカットした. これを50分間ボイル,10分間流水でさらした後微細装置でペ ースト化し分析まで- 20℃で保存した.
2. 2. 2 分析方法
一般成分,酸含量,精油含量,アスコルビン酸,食物繊維及 び食物繊維の物理化学的性質は,2. 1. 2と同様の方法で分析 した.
フラボノイドは,凍結乾燥粉末のメタノール抽出液をH PL C で 測定した.
3.
実 験 結 果 及 び 考 察
3. 1 カボス搾汁残さの成分評価
カボス搾汁残さの一般成分組成は,水分が最も多く多く80 %以上の含有量であった.次いで多いのが炭水化物で14 ∼16% 程度含まれていた.たんぱく質,脂質,灰分は少な かった.未熟果に比べ成熟果は脂質の含有量が多かったが, たんぱく質,炭水化物,灰分は少ない傾向が認められた (Table 1).
滴定酸は乾物重当たりで6%以 上の含有量で,かなり酸 味を感じた.精油含量は乾物重当たり4∼6%程度含まれ ておりカボスの香りが十分に残存していた.アスコルビン酸は 乾物重当たり160mg%程 度で比較的少なかった.今回の分 析では還元型のみを対象としており,酸化型が多い可能性も あり今後検討する必要がある.NDF法 で測定した総食物繊 維は21∼25% 程度で,炭水化物の主要成分と考えられた (Table 2).ペクチンは水溶性画分が少なく,水不溶性画分 であるヘキサメタリン酸可溶画分,塩酸可溶画分が多かった.
成熟果実は未熟果実と比較して酸がわずかに少なく,精油, 総食物繊維が少ない傾向がみられた(Table 3).
カボス搾汁残さには,糖として,ブドウ糖,果糖,ショ糖が含 果実熟度 水分% たんぱく質 % 脂質% 炭水化物% 灰分% 未熟果実 81.2 1.55 0.64 15.8 0.79 成熟果実 83.7 0.99 0.92 13.9 0.52
Table 1 カボス搾汁残さの果実熟度別一般成分組成
果実熟度 酸含量 % 精油含量 %アスコルビン酸 mg%食物繊維 %
未熟果実 6.9 6.2 162 24.6
成熟果実 6.2 4.4 167 21.2 Table 2 カボス搾汁残さのその他成分組成(乾物重当り)
果実熟度 水溶性 ヘキサメタリン酸可溶性 塩酸可溶性 合計
未熟果実 0.13 0.26 0.47 0.86
成熟果実 0.07 0.23 0.25 0.55 Table 3 カボス搾汁残さのペクチン組成 (%)
まれていた.糖の総量は成熟果実が未熟果実に比べて多く, 成熟果実は特にショ糖が多い傾向が見られた(Fig.1).
搾汁残さのダイエタリーファイバーとしての物理化学的性質 の指標として保水量,水中沈定体積を測定した.その結果,未 熟果実,成熟果実とも市販食物繊維素材である粉末セルロー スと比較して保水量,水中沈定体積とも多く,食物繊維素材と して優れていた.未熟果実,成熟果実との比較では,保水量, 水中沈定体積とも未熟果実が成熟果実より優れていた(Fig.
2).
Fig.1 カボス搾汁残さの糖組成
Fig.2 カボス搾汁残さ乾燥粉末の食物繊維としての物理 化学的性質
3. 2 カボス搾汁残さの食品素材化による成分変化 食品素材化のためのボイル,水さらし処理により,脂質,炭 水化物には大きな変化がみられなかったが,灰分,タンパク質
0 2 4 6 8
未熟果実 成熟果実
糖含
量
%
ショ糖 果糖 ブドウ糖
0 2 4 6 8 10 12 14
保
水
量g
、
水
中
沈
定
体積m
l
保水量 水中沈定体積
は少し減少した(Table 4).
酸含量は処理前の5.6%から0.1%と大幅に減少し,それ に伴って酸味を感じなくなった.精油含量は素材化処理により 処理前の50%まで減少し香りが弱くなったが,食品素材とし ては使用可能な程度の減少であった.アスコルビン酸は素材 化処理により消失したが,食物繊維含量は大幅に増加した (Table 5) .
カボス搾 汁 残 さにはネオヘ スペ リジン,ヘ スペリジン,ナリン ギン,ナリルチンの4種類のフラボノイドが検出された.これは,
Kawai2)
らが報告しているカボス可食部のフラボノイド組成と 一致していた.これらすべてのフラボノイドは素材化処理によ
Fig.3カボス搾汁残さの食品素材化に伴うフラボノイドの変化
り大幅に減少し,総フラボノイドは処理前の3分の1以下となっ た(Fig.3).
食物繊維としての物理化学的性質は,食品素材化処理によ り,水中沈定体積,保水量ともに2倍近く増加し,食物繊維素 材として一層優れたものになった(Fig.4).
0 1000 2000 3000
ナリルチン
ナリンギン
ヘスペリジン
ネオヘスペリジン
Total
フラボノイドmg%
処理
無処理
水分 % たんぱく質 % 脂質 % 炭水化物 灰分 %
処理前 2.7 7.6 1.8 83.2 4.7
処理後 5.3 5.5 1.7 84.8 2.7 Table 4 カボス搾汁残さの食品素材化に伴う一般成分の変化 (凍結乾燥粉末)
果実熟度 酸含量 % 精油含量 %アスコルビン酸 mg%食物繊維 %
処理前 5.6 0.90 162 25.7
処理後 0.1 0.45 0 44.0 Table 5 カボス搾汁残さの食品素材化に伴う成分変化
Fig.4 カボス搾汁残さの食品素材化に伴う食物繊維として の物理化学的性質の変化
写真1 ペースト素材の水中での膨潤状態
(左から,市販セルロース素材,無処理,素材化処理)
4.
ま と め
カボス搾汁残さの成分特性及び食品素材化後の成分変化 について検討したところ以下のような知見が得られた. (1)カボス搾汁残さの一般成分組成は,水分が非常に多く, 次いで炭水化物が多く,両者で全成分の97% 以上を占め ていた.炭水化物の主体は糖と食物繊維であった.その他の 成分では果汁に由来する酸と果皮精油がかなり残存していた. (2)カボス搾汁残さを乾燥後粉末化したものの食物繊維とし ての物理化学的性質は市販繊維素材と比較して良好であり, ダイエタリーファイバーとしての利用の可能性が示唆された. (3)これらの成分組成等は未熟果と成熟果で差が見られた. (4)カボス搾汁残さを食品素材として利用するため,軟化,脱 苦味処理したものをペースト化したところ,一般成分では灰分, たんぱく質が減少,その他成分では酸,アスコルビン酸,フラ ボノイドが減少した.果皮精油も減少したが,食品素材としては 利用可能であった.
14.0 25.5
6.4 12.7
0 5 10 15 20 25 30
(5)ペースト素材の食物繊維は,搾汁残さに比べて量が増加 しただけでなく,物理化学的性質も向上しダイエタリーファイバ ー素材としての利用が期待できた.
参 考 文 献
1) 田中滝二,川ノ上実:大分県農水産物加工総合指導セン ター試験成績報告書,12(2001)43
2) Satoru Kawai,Yasuhiko Tomono,Eriko Katasem,Kazunori
Ogawa,and Masamichi Yano:J.Agric.Food Che.,47(1999)356